今回は2007年公開のミュージカル映画『ヘアスプレー』のレビューです。
『ヘアスプレー』(原題:Hairspray)は、2007年制作のアメリカ映画。1988年のジョン・ウォーターズ監督のオリジナル同名映画を元にした2002年のミュージカル劇の映画化。
ヘアスプレー (2007年の映画) – Wikipedia
とまあ現在でもリメイク作品が公開されたりとホットなミュージカル作品なんです。
私は2002年舞台版でリンク役を演じているマシュー・モリソンが好きで、いつか見たい見たいと思ってたのですが、さすがにミュージカル版を見にブロードウェイにはいけなかったので今回は2007年公開の映画版のレビューと相成りました。
目次
軽くあらすじ
作品の舞台は60年代初めのアメリカ・ボルチモア。黒人差別に対する見方や情勢がガラッと変わった激動の時代。日本でもキング牧師の公民権運動と聞けばなんとなくイメージできますよね。
主人公は歌とダンスがメチャ上手い、ホットなぽっちゃり体型のトレイシー。
トレイシーはローカルTV番組の『コーニー・コリンズ・ショー』が大好き。ある日番組に一人空きができ、オーディションが開催されることに…
あとはwikiでも見といてください。この作品は文字だけのネタバレを見たところで面白さは何も失われません。そのくらい『ヘアスプレー』は音楽と映像が大切な映画なんです。
ヘアスプレーが意味するもの
タイトルにもなっているヘアスプレーですが、主人公のトレイシーはビッグシルエットの髪型にするためにがっつりヘアスプレーを使っていました。
『コーニー・コリンズ・ショー』に出演している女性陣も髪のセットに使っていますし、ショーのパフォーマンス道具にといろんなところに現れるヘアスプレー。
私は「ヘアスプレー」=「固まった既成概念」のように思いました。
時代は黒人差別の残る60年台アメリカ。黒人だけではなくトレイシーのようなぽっちゃり体型や、マイノリティーが認められにくい時代です。
トレイシーは番組で「黒人の日」が無くなることに抗議するため、黒人番組出演者たちとデモを起こします。結局警察官をプラカードで小突いてしまい追われる身に。(髪の毛もぐしゃぐしゃのペッタンコ)
ペニーの家に逃げ込みますが、レイシストのペニー母に監禁されてしまいます。
この敬虔なキリスト教信者のペニー母が曲者で、彼女は黒人に対する当時の白人至上主義者を表しているかのようです。
ペニー母は黒人だけでなく、俗っぽい踊りや音楽・TVショーも大っ嫌いです。
表現は若干大げさなところもあると思うのですが、当時の差別的な目線を持つ人達をコミカルに描いています。
いろんな世間の現実を目の当たりにしてトレイシーは気付きます。ヘアスプレーは世間の凝り固まった心を映し出す古臭い流行り(概念)なんだと。
トレイシーは流行に流されて行動することをやめ、新しい時代の考え方を持ったニュージェネレーションに成長したんですよね。
フィナーレの「You can’t stop the beat」でトレイシーはストレートヘアーの現代的な衣装に変身して現れます。
その姿はまさしく作中の中で「異質」なもの。マイノリティーそのものです。トレイシーは黒人・白人を巻き込み差別や偏見関係なしに踊りまくります。
いままで差別をやめるために番組の方向性を変えようとしていた『コーニー・コリンズ・ショー』のホストコーニーや、自分のことばかり考えて正しいと思うことが出来なかったリンク、黒人と恋に落ちたトレイシーの親友ペニー。
ステレオタイプなブロンドバービー人形はお呼びじゃないとばかりに我よ我よと舞台のセンターで踊りまくる。
みな古い価値観を捨ててマイノリティーである自分たちに自信を持っているように私には見えました。
「You can’t stop the beat」よろしく「もう誰にも私たちは止められないぞ」という熱いメッセージのこもったフィナーレとなったわけです。最高です。
流行りものより大切なもの
本作品のテーマは差別からの開放だと思いますが、もうひとつ大事なのが、
「流行に流されること無く自分の正しいと思う行動・思考をすること」だと思いました。
特にトレイシーの父親ウィルバーの生き方がとっても好きです。
ウィルバーは自分の体型で自信のない妻を「永遠の愛人」と言ったり、夢があるなら差別も偏見も関係なく挑戦するべきだとトレイシーを説得したり。
彼からはへアスプレーの臭いがしません。彼は自分のしたいことを実現し、正しいことをずっと行なってきたんですよ。
「父さんと母さんは玄関までは一緒に行けるがそこから先は自分で進むしかない。古い人間のことは気にするな。古い人間がトレイシー(若い人間)から学ぶよ」(正確ではないけどこんなこと言ってた)
て言ったのがズキュンときましたね。こんな父親いたらそりゃ立派に育ちますわ。おもちゃもたくさんあるし。
流行りものが悪いということではないですが、時代に囚われること無く正しいと信じている方へ行動するのが大事だということですね。
他の見どころポイント
トレイシーの母親役はまさかの…?
まずはなんと言ってもトレイシーの母親役”ジョン・トラボルタ”ですよ。笑
初めてみたときは気づかなかったんですがよく見たらトラボルタの個性的なお顔立ちが!!
なかなかにはまり役な感じがします。というより女性の役もできるとかほんとにすごいなこの人…
途中セリフで「男の人の気持ちもわかるのよ」とか言ってて爆笑しちゃいました。そりゃあそうよ。
あとがき
もっと深い考察とかしたいものですが知識不足も甚だしく作品に申し訳ない限りです…
でも『ヘアスプレー』深く考えずともトレイシーの笑顔やダンスに癒やされ元気の出る素晴らしい作品ですのでぜひ皆さんにも観ていただきたいです!